音楽ジャーナリスト飯尾洋一さんによるコンサートの聴きどころ <後編>

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<12月25日(日)開催「身近なホールのクリスマス ピアノとチェロと音楽の歴史」>

当日配布プログラムに掲載予定の音楽ジャーナリスト飯尾洋一さんによる
曲目解説<後編>をご紹介します。

◆<前編>は、こちら。

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本日の公演は、珠玉の名曲をピアノとチェロで楽しむクリスマス・コンサート
といっても、ただ名曲を並べるのではなく、古い時代から新しい時代へと
音楽の歴史をたどる構成になっているところが大きな特徴である。
耳で楽しむ、歴史をたどる旅とでもいえばいいだろうか。
一口に「クラシック音楽」といってもその幅は広い。時代ごとに流行があり、
作曲家たちはその流行に従った作品を書いてきた。作曲家にとって、なんと
いっても大切なのは、その曲が初めて演奏されたときに、客席でウケるかどうか。
初演の評判が悪ければ、次の仕事に響きかねない。その意味では、作曲家たち
の仕事は今の時代とあまり変わりない。どんな古い名曲でも、書かれた当時は
おおむね「当世流」の音楽だった。

では、どんな作品が音楽界で人気を呼んできたのか。本日の公演では、
音楽史の流れを大きく「バロック音楽」「古典派」「ロマン派」「20世紀の音楽」
の4つのカテゴリーに分けて、それぞれの時代を彩る名曲をチェロとピアノの演奏
でお届けする。箕面出身のチェリスト林はるかさんと、その妹でピアニストの
林そよかさんのおふたりのトークが、心強いガイドになってくれることだろう。
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♪ロマン派

古典派の時代に続くのがロマン派の時代。時代でいえば、おおむね19世紀がロマン派
の時代に相当する。古典主義からロマン主義へ。ロマン派を「ロマンティックな音楽」
と説明してしまうと大いに語弊があるのだが、この時代に情感豊かな作品がたくさん
作られたことはまちがいない。音楽語法を拡大したり、文学的な題材や民族音楽の
素材を用いるなどの方法で、音楽による感情表現の幅はぐっと押し広げられた。

◎シューベルト:アヴェ・マリア

古典派の直後に登場するのがフランツ・シューベルト(1797~1828)。まだまだ古典派
の香りが残る、ロマン派の黎明期といえるだろうか。シューベルトは600曲もの歌曲を
残したことから、歌曲王と呼ばれる。「魔王」「野ばら」「セレナード」「菩提樹」など
名曲は数多く、「アヴェ・マリア」もそのひとつ。のびやかなメロディによる祈りの音楽だ。

◎シューマン(リスト編曲):献呈

1810年前後に、シューマン、リスト、メンデルスゾーン、ショパンといったロマン派
の代表的な作曲家たちが続々と誕生している。ロベルト・シューマン(1810~1856)
の書いた歌曲集「ミルテの花」に収められた「献呈」を、フランツ・リスト(1811~1886)
がピアノ独奏用に編曲したのがこの一曲。編曲作品とはいえ、むしろ原曲を超える人気を
獲得しているのではないだろうか。シューマンならではの想いがあふれるような甘美な
曲想が、リストによる華やかな演奏技巧で飾られる。

◎ブラームス:ハンガリー舞曲第1番

シューマンは若きヨハネス・ブラームス(1833~1897)の才能をいち早く見出し、
世に送り出した。そのブラームスの作品のなかでもとりわけ広く愛好されているのが
ハンガリー舞曲集である。ヴァイオリニストのレメーニの伴奏者としてドイツ各地で
演奏旅行を行なったブラームスは、ロマ(ジプシー)の音楽を採譜し、これをハンガ
リー舞曲集として出版した。本来はロマの音楽なのだが、ブラームスはハンガリーの
民族音楽だと解していたため、このような題になっている。曲は当初2台ピアノのため
に書かれ、後にピアノ独奏やオーケストラ用などさまざまに編曲されることになった。


♪20世紀の音楽

ロマン派の後、音楽はどうなったか……といえば、これは一言ではとても説明できない。
20世紀に入り、作曲家たちはそれぞれにまったく異なる方向に向かって、独自の作風
を切り開いていくことになる。伝統的な音楽を解体し、より先鋭で新しい音楽を作り
出そうという激しいモダニズムの嵐が吹き荒れる一方で、保守的な作風にもとづく
新たな傑作も書かれることになる。20世紀は特定の美学やイズムでくくりようがない
時代といえる。

◎ドビュッシー:亜麻色の髪の乙女

クロード・ドビュッシー(1862~1918)は、20世紀音楽の扉を開いた作曲家のひとり。
フランスの印象主義を代表する作曲家でもある。既成の音楽観にとらわれず、
「音楽の本質は形式ではなく色とリズムを持った時間なのだ」として、斬新で
柔軟な作品を生み出した。「亜麻色の髪の乙女」は、前奏曲集第1巻に収められた一曲。
ルコント・ド・リールの同名の詩から、「夏の陽光を浴びて、雲雀とともに愛を歌う、
さくらんぼの唇をした美少女」という一節に触発されて書かれた。「亜麻色の髪」
とは明るめの金髪を指す。日差しを浴びてプラチナブロンドを輝かせる少女をイメージ
すればよいだろう。

◎ラフマニノフ:ヴォカリース

セルゲイ・ラフマニノフ(1873~1943)は、ロシアに生まれ、その後アメリカに
わたった作曲家兼ピアニスト。代表作であるピアノ協奏曲第2番をはじめ、濃厚な
ロマンティシズムにあふれた作風で知られる。ヴォカリースとは母音だけで歌われる
歌詞のない歌を意味する。したがって原曲は歌曲だが、さまざまな楽器のために編曲
されて親しまれている。哀愁を帯びた息の長い旋律がロシア情緒を漂わせる。

◎山田耕筰:からたちの花/この道

20世紀に入ると、クラシック音楽は非西欧世界にも広がりを見せる。大正、昭和期
における日本楽壇で主導的音楽家の役割を果たしたのが山田耕筰(1886~1965)だ。
ベルリンの王立アカデミーで作曲を学び、帰国後作曲と指揮で活躍。北原白秋と出会い、
雑誌「詩と音楽」を共同創刊し、日本語と西洋音楽を融合させた歌曲創作に情熱を注いだ。
「からたちの花」と「この道」はいずれも北原白秋の詩による歌曲が原曲。
多くの日本人に愛唱される名曲である。


以上です。最後までお読みいただきありがとうございました。
クリスマスの午後は、メイプルホールで皆様のお越しをお待ちしています。

◆コンサート詳細は、こちら。〔チケット発売中〕


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